新入社員を受け入れてしばらくすると、現場や人事が返答に迷うような言葉に出会うことがあります。
「自分だけ仕事を覚えるのが遅い気がします」「チームの雰囲気があまりよくない気がします」「このままここで頑張っていけるか不安です」――そんな声に、どう返すべきか立ち止まる場面も少なくありません。
こうした“ドキッとする声”は、単なる弱音ではなく、立ち上がり期の不安や違和感が表面化したものです。ときには、本人だけでなく、職場の受け入れ体制やマネジメントのあり方に目を向けるべきサインであることもあります。重要なのは、その場を収める返答を急ぐことではなく、発言の背景に何があるのかを見立てることです。
今回はHR OnBoardの回答事例をもとに、新入社員から寄せられる
“ドキッとする声”をどう捉え、どのように対応していくべきかを整理します。
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※事例は実際の回答をベースに、プライバシーに配慮して構成しています。
この記事の要約
この記事でわかること
・新入社員から寄せられる“ドキッとする声”の背景にある不安や違和感を、具体例をもとに整理します。
・発言の背景を踏まえた受け止め方や状況確認のポイント、適切な対応・フォローの考え方を解説します。
・新入社員の違和感や不安を見過ごさないために、声を拾いやすい環境づくりのヒントを紹介します。
新入社員から寄せられた「ドキッとする声」と対応のポイント
「入社して少し経ちますが、自分だけ仕事を覚えるのが遅い気がします」
質問の背景をひも解く
この言葉の背景には、「仕事が難しい」という事実だけでなく、「自分は周囲にどう見られているのか」「この先やっていけるのだろうか」といった不安が隠れていることがあります。実際の事例でも、本人がつらさを感じていたのは業務面だけではありませんでした。話を聞いてみると、職場内のコミュニケーションが希薄で、会社に行っても楽しいと思えないことも、大きな負担になっていたのです。つまり、こうした声が出たときは、本人の能力や努力だけの問題と決めつけず、孤立感や職場環境にも目を向けることが大切です。
対応のポイント
受け止め 不安な気持ちそのものを受け止める
まずは励ましたり評価したりする前に、不安な気持ちそのものを受け止めます。「率直に話してくれてありがとう」「今つらく感じているんですね」と、安心して話せる空気をつくることが第一歩です。
現状把握 困りごとを丁寧に確認する
困っているのが業務そのものなのか、周囲との関係性なのか、それとも自分の評価への不安なのかを丁寧に確認します。必要に応じて、本人の了承を得ながら周囲にも状況確認を行うことで、見立ての精度が高まります。
アクション 業務面と環境面の両方を支援する
業務習得には一定の時間がかかることを伝え、不安を少し和らげつつ、必要に応じて面談や周囲との接点づくりなどのフォローを行います。本人への声かけと同時に、職場になじみやすくする支援も重要です。
「直属の上司に質問や相談がしづらいです」
質問の背景をひも解く
この言葉の背景には、「上司が忙しそうで話しかけづらい」「以前注意されたことが引っかかっている」「自分の相談の仕方が悪いのではないか」といった萎縮が隠れていることがあります。新人にとっては、相談したい気持ちがあっても、“いつ・どうやって・どこまで聞いていいのか”が分からないだけで、ハードルは一気に上がります。また、一度ネガティブに受け取った経験があると、必要以上に遠慮してしまうこともあります。このケースでは、気持ちを受け止めるだけでなく、相談の仕方そのものを具体化して渡すことが有効です。
対応のポイント
受け止め 感じている相談しづらさを否定しない
「話しかけづらいと感じるのは自然なことです」と、感じ方そのものを否定しないことが大切です。
性格の問題にせず、今そう感じている事実を受け止めます。
現状把握 どこでつまずいているのかを具体化する
どんな場面で相談しづらいと感じるのか、何が引っかかっているのかを具体的に聞きます。「忙しそうだから」「以前注意されたから」など、背景が見えると次の支援が考えやすくなります。
アクション 相談しやすくなる型を渡す
相談の「型」を具体的に共有することも有効です。
たとえば、「●●の件で5分ほど相談したいのですが、今お時間よろしいでしょうか」と、要件と所要時間をセットで伝えるやり方です。もしその場で難しければ「いつなら可能か」を確認する手順までセットで伝えておくと、新入社員も安心して相談できるようになり、心理的なハードルがグッと下がります。
「キャリアパスが明示されておらず、将来のイメージが描けません」
質問の背景をひも解く
この言葉が出たとき、つい「制度の説明不足かな」と考えたくなります。しかし実際には、制度そのものより、「自分はここでどう成長できるのか」「何を期待されているのか」が見えていないことへの不安である場合も少なくありません。事例でも、本人はキャリアパスの不透明さに加えて、上司との会話が売上目標の話に偏っていることや、仕事の目的・意義について話せないことにギャップを感じていました。つまり、キャリアへの不安は制度整備だけでなく、日々の対話不足から生まれていることもあるのです。
対応のポイント
受け止め 将来が見えない不安に寄り添う
「将来のイメージが持てないと不安になりますよね」と、気持ちを言語化して受け止めます。
制度の話にすぐ飛ばず、まずは本人が何に不安を感じているのかに耳を傾けることが大切です。
現状把握 不安の正体を整理する
不安の対象が、昇進昇格の仕組みなのか、上司との対話不足なのか、仕事の意味づけなのかを整理します。キャリアへの不安に見えて、実は上司との関係や期待役割の曖昧さが根っこにあることもあります。
アクション 目の前の仕事と将来をつなげて対話する
制度の説明だけで終わらせず、目の前の目標と中長期の成長がどうつながるのかを対話します。また、会社としての期待をきちんと言葉で伝えることも有効です。必要に応じて、人事や経営層がフォローに入ることで、本人の安心感につながることもあります。
「チーム内の人間関係が良くありません」
質問の背景をひも解く
こうした言葉は、本人の困りごとというより、「職場の違和感」に対する観察として出てくることがあります。本人は「自分は特に気にしていない」と言っていても、実際にはチーム運営やマネジメントの問題が潜んでいるケースもあります。重要なのは、個人の感想として流さず、職場課題のサインとして受け止めることです。一方で、本人の発言が特定されないよう、情報の扱いには十分な配慮が必要です。
対応のポイント
受け止め 気づきを共有してくれたことに感謝する
「気づいたことを共有してくれてありがとう」と、声を上げてくれたこと自体に感謝を伝えます。本人にとっては大きな悩みではなくても、組織にとっては重要な気づきである可能性があります。
現状把握 事実と印象を切り分けて確認する
どんな場面でそう感じたのか、誰かの言動やチーム内の雰囲気にどう違和感を持ったのかを、差し支えない範囲で聞きます。ここで重要なのは、詮索しすぎず、事実と印象を切り分けながら把握することです。
アクション 慎重に共有し改善につなげる
本人の了承なく発言内容をそのまま共有しないよう注意しながら、必要に応じて上司の上司や関係者に相談します。対応した内容や今後の動きについては、本人にもきちんと返し、放置された感覚を残さないことが大切です。
「組織変更が多すぎて、その度に誰に相談すればいいのか、
誰の指示が優先なのか、毎回わからなくなるので正直しんどいです」
質問の背景をひも解く
会社側としては成長機会の提供や期待を込めた配置転換でも、本人に背景が伝わっていなければ、「振り回されている」「大切にされていない」と受け取られてしまうことがあります。このケースで重要なのは、会社の意図を説明することより先に、本人がどう受け止めていたかを聞くことです。これは“正しい施策かどうか”と、“本人が納得できているか”は別の話であるためです。背景や期待を伝えることはもちろん大切ですが、その前提として、まず感情を受け止める必要があります。
対応のポイント
受け止め しんどさを感じる気持ちを受け止める
「しんどいと感じるのも無理はありません」と、まずは感情を受け止めます。会社側に意図があったとしても、本人の受け止めがつらいものであれば、その感情は軽く扱うべきではありません。
現状把握 組織の背景と、本人側の認識を整理する
面談前に、必要に応じて上司や関係者へ状況確認を行い、配置変更の背景や意図を把握しておきます。ただし、面談の場では事情説明を急がず、まずは本人が何にしんどさを感じていたのかを丁寧に聞くことが大切です。
アクション 変更の意味づけと期待を丁寧に伝える
本人の気持ちを受け止めたうえで、変更の背景や期待をきちんと言葉で伝えます。「期待しているからこその配置だった」という意味づけが伝わるだけでも、受け取り方が大きく変わることがあります。必要であれば、上司からも改めて説明やフォローを行うとよいでしょう。
最後に 声を拾いやすい環境をつくるために
ここまで見てきたように、新入社員からの“ドキッとする質問”に対しては、表面的な言葉だけで判断せず、その発言の背景にある不安や違和感に耳を傾け、丁寧に向き合う姿勢が大切です。
また、丁寧に向き合うことと同じくらい大切なのが、声をきちんと拾える状態をつくっておくことです。新入社員の中には、違和感やつまずきを抱えていても、「これくらいで相談していいのだろうか」「自分が気にしすぎなだけかもしれない」とのみ込み、何も言えないまま過ごしてしまう人もいます。
その結果、周囲には問題なく見えていても、本人の中では不安が積み重なり、ある日突然、退職意向というかたちで表れることもあります。だからこそ、声が上がってから対応するだけでなく、小さな違和感や不安を拾いやすい環境や仕組みを整えておくことが重要です。
そうした環境や仕組みを整える打ち手として、たとえば次のようなものが考えられます。
①本音を話しやすい場を設ける
状態を把握するだけでなく、その背景を丁寧に見ていくには、安心して話せる対話の場も欠かせません。1on1面談を通じて、日々の困りごとや感じている違和感を言葉にしてもらうことで、表面的な発言だけでは見えにくい気持ちや背景も捉えやすくなります。
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②周囲には言いにくい本音を拾う
新入社員の中には、不安や違和感があっても、上司や周囲には直接言いづらいと感じる人も少なくありません。そうした声を拾いやすくする方法の一つが、パルスサーベイシステムの活用です。定期的に状態を確認することで、つまずきや離職リスクの兆しを早めに把握し、必要なフォローにつなげやすくなります。
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